元吉本興業、伝説の広報マン竹中功さんが語る「広報PRの極意」の様子をレポート

2021年11月20日にビィーゴのイベントルームにて北大阪商工会議所四條畷市商工会との共催イベント元吉本興業、伝説の広報マン竹中功さんが語る「広報PRの極意」を開催しました!

今回の講師は、元吉本興業の敏腕広報マンで、現在は作家、ラジオパーソナリティーなど様々な分野で活躍されている竹中功さんです。イベントは、会場とオンラインとの同時開催。地元枚方、寝屋川の方をはじめ全国から100人近い方に参加していただきました。多くの質問が出て大いに盛り上がりました!!

このイベントの企画・運営に関わったスタッフまさやんが、当日の様子をリポートします。当日参加できなかった方もぜひ最後まで読んで下さい。

第1部 講義「広報PRの極意」

イベント前半は竹中さんによる講義。よしもとNSC(吉本総合芸能学院)の開校、吉本新喜劇のリニューアルなど竹中さんが関わったプロジェクトを例に「広報PRの極意」について1時間半たっぷり語っていただきました。

竹中さんのルーツは寝屋川、京阪沿線

竹中さんは、寝屋川市育ち。同志社香里高等学校、同志社大学を卒業されています。吉本興業の新人研修も京都花月。ビィーゴのある枚方市や京阪沿線には思い入れがあるそうです。今回も「地元のためになるなら!」と講演を引き受けて下さいました。


広報で大切なことはニュースをつくること

竹中さんによると、広報で大切なことは、「新しいもの、すなわちニュースをつくること」だそうです。「何月何日に何々をしますって、事実を並べることはどうでもいい。新しいものを作ってそれをリリースするのが大事です」。学校(よしもとNSC)や劇場(心斎橋筋2丁目劇場など)づくり、吉本新喜劇のリニューアル、映画製作…竹中さんが関わってこられたプロジェクトはすべて(広義の)「広報」なのだそうです。


「広報PRの極意」は新聞スクラップで学んだ

竹中さんは、新人時代上司の指示で(自社に関する記事が掲載された)新聞のスクラップをされていたそうです。「関西の新聞、夕刊紙も含めて全十数紙を毎日。2,3年はやったかな。すると、門前の小僧で、書いている記者やデスク、文化部長の気持ちが分かってくるんですよ」。

そこで、媒体ごとの特徴、記者の好みを知り、それに合わせたプレスリリースをすることで掲載される記事を増やしていったそうです。

追いかけるものの強さ(よしもとNSC開校)

竹中さんは1982(昭和57)年4月、芸人を養成するための学校、よしもとNSCの開校に関わります。同校は、これまで弟子入りや裏方(劇場の進行係)出身者が主だった芸人養成の世界に風穴を開けました。

「よしもとNSCがうまくいったのは、追いかけるものの強さなんですよ。すでに大阪に芸人の学校は3つあったから、どんな人が関わっているか、タレントの質はどうかなど徹底的に研究しました。たとえば、テレビ局の幹部はもうすでに他で押さえられているからこちらは若いディレクターをつかむようにするなどですね」。

よしもとNSCの一期生からは、ダウンタウン、ハイヒール、トミーズなど今でも第一線で活躍する芸人が誕生。彼らに憧れて多くの若者がよしもとNSCの門を叩きました。1995(平成7)年には、東京校も開校。今やよしもとNSC出身の芸人を見ない日はないぐらいです。

「彼らのために場(劇場)を作って、正当に競争させたことが大きいでしょうね。吉本には小屋があり、自分たちでプログラムを作っているからそれができるのです。活躍している先輩達の姿を生で観ることができたことも大きいです」。

広報とは「企業とユーザーを繋ぐコミュニケーション活動」

竹中さんによると、広報とは「企業とユーザーを繋ぐコミュニケーション活動」のことをいいます。広報はお金をかけないのが前提です。これに対して、広告は有料です。

広報の役割は、メディアからの問い合わせの窓口、取材の受付のほか、ユーザーからの苦情、疑問に応えること。「情報を出し入れするところにいて、話すことと聞くことを行ったり来たりするのが仕事ですね」。

「社内広報」の重要性

広報というと、上記のような対社外の活動が思い浮かびますが、「同業他社にはじまり競合他社、ユーザーの動向、趣味嗜好やニーズを知り、社内に知らせることも大事な仕事」だそうです。

「広報担当者には内外の様々な情報が集まってきます。だから、それをきちんと社内にも伝えなければいけない。そのことが、新たな商品やサービスの開発に繋がり、ユーザーに利益を与えることで企業も成長できるんです。」

社外広報で大事なこと

社外広報で大切なことは、「ニュースを作ることとメディアとのリレーション構築」だそうです。「何を取材して欲しいのか、そのために誰を取材してもらうのがいいのか、例えば、社長のインタビューがいいのか、開発本部長がいいのかなどこちらから提案できるぐらいでないとダメです。どのメディアの誰に取材してもらうかも大事です。そのために、人との関係を作らなければいけません。『何件メールしました、faxしました』だけだと仕事とは言えないんです」。

竹中さんはそのために、「関西演芸記者クラブ」をゼロから立ち上げるなどして、記者一人ひとりと人間関係を築いてきました。「先ほどお話ししたように、新聞のスクラップをすることによって、記者やデスクの気持ちが分かるようになったことも大きかったです。(新聞社の印刷)工場見学も行きましたからね。当時は各社の締め切りも全部知ってましたよ。この時間なら、まだ原稿が入るな、って」。

第2部 質疑応答コーナー

ここからは、私が聞き手になって、講演で気になった点を質問させていただきました。会場の方やオンライン参加者からもたくさん質問をいただきました。その中から一部を紹介します。

Q.面白い発想をされる竹中さんの原点となる経験は何ですか?

小学生時代に経験した大阪万博(1970年に開かれた日本万国博覧会)ですね。あれを超える刺激に出会ったことはありません。いわば、原点。刺激の源ですよね。人を喜ばすというのはどういうことかを学びました。そのことを形を変えてやってきたというところはありますよね。2025年の万博がどんなものを見せてくれるのか楽しみです。

Q.ニューノーマル時代の働き方について。コロナ禍で変わったことはありますか?

会社(オフィス)はあるけど、ほとんど出社しないって状況が続きました。経営者目線で言うと、人の評価が難しくなりました。評価の仕方が数字しかないのは厳しいな、と。数字には表れていないけど、種まきをした人はこの人だというのが評価しにくいですね。

働き方については、多拠点やリモートなど多様な選択肢ができたことはいいですよね。会社に来ない方が効率よく仕事ができるのだったらそれでいいし。ただ、私がいま社長を勤めるフェザンレーヴという会社は広告会社でクリエイティブも扱っているので、難しいところがあります。やはり、人が集うことでアイデアが生まれる面があるので。

Q.最後に一言お願いします。

僕のキーワードは「編集」。これまで、エディトリアルなものの考え方を生かしてやってきた。クリエイティブな人や情報を束ねて並べ直すのが仕事です。この考え方は、経営もそうですし、どんな分野にも生かすことができると思います。みなさんにこれから編集のことを学べとは言わないけれど、(編集の)基本的なところは知っておいた方がいいと思います。

働き方について、一番よくないのはストレスですよね。今日は話が長くてストレスだったかもしれないけど(笑)。とにかく、ストレスなく働きましょう、と。これ大事ですよ。

まとめ

吉本興業で長く活躍された方だけあって、具体例を交えながらの講演はとても楽しく、参考になることばかり。二時間半があっという間に過ぎていきました。特に、新聞スクラップを通して、発信する側の気持ちを理解したというエピソードが印象に残りました。地道な作業の繰り返しこそが大きな成果を生むのだとあらためて感じました。

吉本興業時代の実績がすごいのはもちろんですが、竹中さんは今も面白いことをやり続けられています。それだけに、まだまだ聞いてみたいことがたくさんあります。イベントに参加された方、この記事を読んでいただいた方もきっと同じ気持ちだと思います。そんな方は、ぜひ、竹中さんの著作を読んでみて下さい。広報担当者はもちろん、そうでない人も仕事のヒントが見つかるはずです。

イベントはオンラインでも開催

今回のイベントは、オンラインでも同時開催しました。今まで来られたことがない方にもビィーゴやビィーゴ大学について知ってもらえるいいきっかけになったと思います。これからも、会場、オンライン、それぞれの特性を生かしてイベントづくりをしていきたいと思います。

講師プロフィール

竹中 功 (たけなか いさお)さん

1959年大阪市生まれ 寝屋川市育ち
同志社大学法学部法律学科卒業
同志社大学大学院総合政策科学研究科修士課程修了
ワタナベエンターテインメント広報顧問、株式会社フェザンレーヴ取締役社長

1981年吉本興業株式会社入社後、宣伝広報室を設立。『マンスリーよしもと』初代編集長。よしもとNSCの開校。多数の劇場の立ち上げ。
沖縄映画「ナビィの恋」、香港映画「無問題」などの映画製作。
よしもとクリエイティブ・エージェンシー専務取締役、よしもとアドミニストレーション代表取締役などを経て2015年退社。
現在は作家として謝罪関連から、広報、コミュニケーションの専門家としての出版も多数。著書に『よい謝罪 仕事の危機を乗り切るための謝る技術』(日経BP社、2016年)、「お金をかけずにモノを売る ​​広報視点」(経済界、2017年)などがある。
また講演会やセミナーを通してビジネス人材の育成や危機管理、広報、メディアリレーションなどに関するコンサルタント活動を行う。
また2014年より法務省からの求めに応じ、刑務所での釈放前改善指導を行うなど、その活動は多岐にわたっている。
最近は、NHK総合「SWITCHインタビュー達人達」に出演されたほか、NHKラジオ第2「こころをよむ」のパーソナリティーもつとめた。

ビィーゴ大学とは

ビィーゴ大学は、ビィーゴ会員が得意な分野を生かして先生になり、普段なかなか聞くことができないビジネス・仕事に直接繋がるノウハウを教えてもらえるスクール事業です。2021年は、ココロとカラダの健康、自己分析、転職などのテーマで開催しています。

ビィーゴ大学今後の予定

ビィーゴ大学は、今後も月1.2回のペースで開催予定です。今後のイベントにもご期待下さい!詳細はビィーゴのホームページをご覧下さい。

この記事を書いた人
まさやん
ビィーゴのイベントディレクター兼写真部長です。大阪市生まれ枚方市育ち。地元を拠点に、全国各地のローカル&ソーシャルな活動に関わるべく、いろいろ動いています。趣味は、鉄道旅・読書・スポーツ観戦(特にラグビーが好き)。