フリーランス プロダクトデザイナー西山さんに聴く「リスクを顧みず ゼロから価値を生み出す」とは?【ビィーゴ会員様インタビュー】
コワーキングスペースビィーゴの利用者のみなさまに焦点を当て、その人の人生や仕事観についてお伺いするビィーゴオリジナルインタビュー企画「あの人に聴いた!働くってなんですか?」
第6回目のゲストは、フリーランスのプロダクトデザイナーとして活躍する西山さんです。
西山さんは、バーチャルオフィス会員としてビィーゴを利用されており、kikikaku P&Dの屋号で、プロダクトデザインのお仕事をされています。
そんな西山さんですが、興味の赴く仕事に取り組み、その道をたどっていくことで決断した独立に対して、思うようにいかなかったこともあったのだとか。しかし、自分を押し殺さずに思ったことは実行に移すことで、ゼロから楽しい仕事を生み出すことができると言います。
全てをポジティブに思考する。そんな西山さんの今までの人生、またこれからの人生について、現役大学生であるビィーゴスタッフわかなが聴いてきました。
西山 徹 [kikikaku P&D(キキカク プランニング&デザイン) 代表]
1968年 京都府に生まれる。1992年 愛知県立芸術大学/デザイン学科を卒業。その後、国内の自動車メーカーで自動車内装のデザイン、パナソニック(株)で家電や住宅設備機器のデザインなどを担当。
2018年に独立、現在に至る。
2000年、2003年、2007年、2008年
グッドデザイン賞受賞(パナソニック在籍時)
2019年~ 摂南大学/住環境デザイン学科非常勤講師
公式サイトはこちら
<インタビュアー>:わかな(ビィーゴアルバイトスタッフ/大学生)
1.プロダクトデザインとは?
フリーランスのプロダクトデザイナーということですが、「プロダクトデザイン」とは具体的にどういったお仕事をされているんですか?
企業や会社から依頼を受けてモノのデザインをするということや、モノに限らず、サービスであったり事業そのものであったり、あるいはブランディングといって、会社そのもののデザインなど幅広く行っています。
様々なデザインをされているんですね!
2.リスクを顧みずに有言実行を。
プロダクトデザインというお仕事をされているわけですが、様々なデザインのお仕事の中でもプロダクトデザインというお仕事を選ばれた理由というものはありますか?
昔の話ですけど、高校生の頃はモノを作るのが好きだったんです。デザインではなくて設計みたいなのをやりたい!と思って。
最初に興味が向いたのは設計だったんですね!
なので、どちらかというと理数系の勉強をして、そういった方向の設計士になれるような大学に行こうかなぁと思っていたんです。
でも、高校3年生くらいの時に「自分が好きなのはもしかしたら設計じゃなくてカタチとかデザインなのかも知れない。」と、ふと思って。
急遽切り替えてデザインのできる大学に進学したというのが一つのターニングポイントですかね。
進学先の変更は大きなターニングポイントですね。
高校3年生の時に思わなかったら今自分はデザイナーじゃなくて設計士をやってたのかも知れない。
そうなっていれば、今は設計士さんとしてインタビューしていたかもしれませんね!
大学ではデザインの中でも特にプロダクトデザインの勉強をして、卒業後は車関係の会社で車のデザインを7年程やっていたんです。
車のデザインをされていたんですか!
具体的には車のどの部分をデザインされていたんですか?
具体的には車の内装のデザインが中心でした。
やっぱり20代の頃って車とかにすごく興味があったので、それをやりたいこととして車のデザインをしていたんですけど、しているうちに車だけじゃなくて他のモノもデザインしたいなぁと思うようになってきたんです。
車以外のデザインにも挑戦されたんですか?
この会社にいたらずっと車のデザインしかできないなぁと思ったので、家電メーカーに転職しました。
電化製品ですか!
家電メーカーでは約20年デザイナーとして働いていました。テレビや冷蔵庫なんかのメジャーな商品ではなくて、マイナーな健康器具や配線器具のデザインをしていました。
車会社よりもとても長く働かれたんですね。
そうですね。
大体私はマニアックなモノのデザインを指名されていました。
そうだったんですね。笑
テレビや冷蔵庫はある意味、すでに出来上がってるモノなんです。デザインと言ってもトレンドを入れるなどの割とわかりやすいものなんですけど、世の中にないものを作る時のデザインは本当に大変で、ゼロから全て考えないといけないんです。
でもポジティブに考えれば、マイナー製品を指名してくれるということは、ゼロから考えることが得意な人間なんだと思われてるんだろうなぁと勝手に思い込んでました。
さらに、メーカーの仕事だけではなくていろんな地域の中小企業さんのデザインの仕事なんかもできたらなぁと、思うようになってきて。
環境が変われば新しい考えや思いも生まれますよね!
それで2年前、ちょうど50歳の時に独立してフリーランスになりました。
だから、ターニングポイントはいっぱいあったなぁと思います。
環境が変わる度に自分の中で思ったことは、実行しようと決めています。思い浮かんだけれども難しいなぁとなると、自分を押し殺してしまうというか自分に嘘をついているようで嫌なので。
有言実行、素敵です!!
こうしたいなぁと思い始めたら実行する。
リスクはありますが、そのようにしています。
3.先読みの出来ないコロナ禍での失敗。
今までの転職であったり、自分に嘘をつかないで生きていく中で、これは失敗したなぁと思ったことはありますか?
最近失敗したなぁと思ったのは、フリーランスになったタイミングですね。
本当に最近のことですね!
独立してフリーランスとして活動し始めて2ヶ月後に緊急事態宣言が出てしまいました。スタートダッシュを切ろうと思っていたのに、コロナの影響でスタートした瞬間にストップ!って止められたような感じがあって。
まさか、コロナの影響が今にまで響くとは想像できませんでしたよね。
タイミングを間違ったなぁというのは思いましたね。もう少し前に、もしくは逆にもう少し落ち着いてからにしたらよかったかなぁと。
スタートダッシュが切れなかったというのがね……
まぁでも終わってしまったことは仕方がないので、前向きにしていこうかな!と色々考えながらやっているところです。
4.何事も考え方次第!
フリーランスとしてプロダクトデザインという分野のお仕事をされている中で何か大切にされていることはありますか?
プロダクトデザインにはとても大切なことなんですけども、基本的に全てポジティブな思考をするという考えです。
何かあったとしても、見方を変えればポジティブになるよ!という思考です。
見方を変える視点の取り方はプロダクトデザインでも大事なことなんです。
多角的に物事を考えることは大切ですね。
どうしてもネガティブな部分は印象に残るというか、強く表に出てきてしまう部分なので、ついそこばかりを気にしてしまうと思うんです。
でも、見ようによってはとてもポジティブになるんだよということを伝えたいです。
だから、実際に仕事でモノをデザインするときもポジティブな印象のデザインを基本にしています。仕事はポジティブシンキングで取り組みます。
5.努力が実を結んだあの瞬間。
様々な環境でデザインのお仕事をされている中で、何か印象に残っている嬉しかったエピソードはありますか?
やっぱりデザイナーとして嬉しい仕事の瞬間というのは、デザインしたものが喜ばれた瞬間。
実際に使ってくれるお客さんもそうですし、例えば会社の中であっても「こういう商品を出したい!」という企画とか思案に対してデザインのプレゼンテーションをした際に「このデザインしましょうよ!」や「この考え実現させましょうよ!」と好評だった時なんかはやっぱりすごく嬉しいですね。
なるほど〜、実際に喜びの声を聞くと嬉しいですよね!
当然その逆もあって、せっかくデザインしたのに喜ばれなかった時ほど悲しいことはないですね。
でも、そういう時は大体出す前に自分でも「ちょっと今回イマイチだなぁ」という風に思うんですよね。
でも、仕事では時間制限があるので、「まだちょっとやり足りないなぁ」と思いながらも時間の関係で出してしまった時の低評価は寂しい。
だから、いかに時間内に最高というか、良いものまで作り上げられるかというのは今も昔もずっと課題です。
特に思い入れがあったことやモノはありますか?
設計的に成り立たないからデザインを変更しないといけない!と次の日の朝までにデザインの修正を設計からやり直しさせられた時ですかね。
それは無茶振りですね!
「はぁ?!」と思いながらも一晩会社に泊まって修正して、翌朝も太陽が昇りかける頃に「あぁやっとできた!」って。
朝8時くらいに設計の人が会社に来られて「良いじゃん!」と言ってくれた時はホッとしましたね。
それは嬉しい瞬間ですね。間に合ってよかったです!
もう30年くらい前の話ですけど、そんな瞬間は「報われた!」というのがとてもありましたね。時間をかけてより丁寧に仕事をしたことで喜んでもらえると、やっぱり今でも嬉しいなぁと思います。
6.ゼロから価値を生み出すコンサルティング。
フリーランスになられてからのお仕事はどういった感じでされているんですか?
会社さんと1対1の時は、今まであった商品を考えるよりも「新しい商品を考えてみませんか?」であったり、「新しい商品や今までなかった事業に取り組んでみませんか?」というような提案をしながらデザインをしていくことが多いですね。
西山さんが新たな提案をするんですね。
ゼロからの場合が多いです。
例えば、金属加工をしていた会社から「何か新しい金属の加工を!」とどうしてもお願いされるんですけど、「別に金属の加工にこだわらないほうが良いんじゃないです?」とお伝えしています。
確かに今は、設備も整っていたり人の技術も高かったり金属加工にはそういったことが多いですが、それらを生かして別のことができるかもしれないじゃないですか。それを「一度考えてみませんか?」というような仕事内容が多いです。
コンサルティングですね!
そうですね。『事業デザイン』という言い方もしています。
今は完全に一人でお仕事されているんですか?
基本は1人ですね。ただ、私はどちらかというとプロダクトデザインと企画コンサルティングの範囲までなので。
例えば、「商品を開発した流れでWebもやりたい!」とか「パッケージのデザインやグラフィック、広告のデザインもしないといけないんだ!」という仕事が入って来た場合は、知人のデザイナーさんとコンビを組んで進めていきます。
皆さんそれぞれの得意分野を生かして連携したお仕事をされているんですね。
商品を含めたらトータルディレクションといった感じですかね。
一人ですけど、別に一人でもない。チームでしているという感覚です。
7.オンラインでも積極的に!
西山さんのようにフリーランスでプロダクトデザインをお仕事にされている方って多いんですか?
フリーのグラフィックデザイナー、Webデザイナーの方は割と多いですよね。でも、プロダクトデザインの方は割と少ないみたいです。なので、「フリーでプロダクトデザインしています!」と言うと最初は驚かれますね。「何をしているんですか?」と聞かれますから。
今はどんなお仕事をされていますか?
大学でデザインを教える仕事もしています。講師もしているんですよ。
大学で講義をされているんですか!
プロダクトデザインの講義をしています。コロナ以降は全部リモートのオンラインで授業をしていますが。
私は大学で生徒として講義を受けている立場ですが、教えている立場として「今の大学生はもっとこうした方がいい!」とかありますか?
対面では伝わることもリモートのオンライン授業だと伝わりにくいことがあって。
ピンポイントな話なんですけど、オンライン授業だと質問がないまま淡々と進んで、終わった後も「わからないことがあったらチャットとかで質問していいんだよ!」ということを言うんですけどまず誰もしない!
確かに対面とオンラインでは大きく変わりますね。
やはり対面と比べてオンラインは質問したり発言したりするのが難しいなぁと、私自身も授業を受けていて感じました。
テレビやYouTubeを見ているのと同じ感覚で聞き流してしまっているんじゃないかなぁと。
やはり勉強しているからには身につけていくというのが大事なので、もう少し積極的に取り組んだ方がいいかなぁと思いますが、どうですか?笑
意識して積極的に取り組まないとですね……笑
でもね〜これはね〜講師側も悩んでいるというか気にはなっているんだよね。「自分の仕方が悪いかなぁ?」とか「もっと学生に興味持ってもらうためにはどんな仕方をしたらいいんだろう。」とか思うんですよ。思うけれども、未だにオンラインには慣れていないし。
誰もが手探りで進めていますよね。
講師側もかなり手探りで講義していたり学生もどうしたらいいか悩んだり、結構大変なんだろうなぁと思っています。難しいですよね。こればっかりは。
8.とりあえず一歩踏み出す。
就職であったり進学であったり、将来について悩んでいる学生に向けて何かメッセージをいただけますか?
悩むよりとりあえずやってみましょうよ!というスタンスですかね。自分もそうですけど、転職を何回かすることで毎回したいことが変わったり、あるいはもっとこうやりたいなぁという本当のやりたいことが見つかったりした時に、それぞれの思いに合わせて変えていけばよいので。
そうですね!
最初からベストなところにいることはないと思うし、今の考えが変わる可能性もあるので。
色々悩んだ結果やっぱり合わなかったなぁとしょげるよりは、とりあえず一回してみたり、会社に一回入ってみたりして、合わなかったら次変わろう!というように、ポジティブに変えたほうが良いんじゃないかな。
やはりポジティブに考えることは大事ですね。
だから悩まずに!まずは一歩踏み出してみましょう!気楽に!一生同じ会社に就職して働くという時代じゃないので。
あまり悩まずにやっていきましょう!ということです。
はい!ポジティブにまずは一歩踏み出してみます!
9.勉強をしながら社会を知る。
西山さんはどんな大学生だったんですか?
学生時代はあまり良い生徒ではなかったと思うんですよ。
そうなんですか?!
バイトばかりしていたのであまり良い学生ではなかったです。でも、大学生はやっぱりアルバイトをすべきだと思いますね。少しずつ社会のことを知りながら勉強をしないとだめだと思うので。勉強ばかりに集中していきなり社会に出るとギャップに戸惑うと思うので。少しずつ社会との関わりを持つべきだと思います。
確かに、今のバイトをせずに大学卒業後すぐ社会に出ていたら上手くいかないだろうなぁと思います。
少しずつ社会との関わりを持ちながら勉強をして次のステージに行く。
助走期間だと思うので、勉強と社会と上手く折り合いをつけながら自分でしていくのがいいんじゃないかなぁという気がします。どちらかに偏りすぎはだめなので。大学生のうちはちょうど良い期間だと思います。
10.地方との繋がりを作る。
なかなか先が見通せない世の中ですが、何か今後の展望はありますか?
最近始めているのは、いろんな地域、地方の会社さんと繋がっていくことですね。
関西や大阪から範囲を広げて、岡山辺りの会社さんだとか高知の企業さんであったり。最近はインターネットですぐに繋がりを作ることができます。地方でも「こんな企業がこんなことを募集してるよ!」というのが掲載されていたり、コンタクトを取ることができるサイトがあったりするので、そういったツールもうまく利用していますね。
今の時代だから出来ることを活用していくのはいいですね!
やはり地方になるとデザイナー自体が地元にいないということが多いので。大阪は多い方なんですよね。依頼する人がいないという点で困っている人がたくさんいるというのが最近わかってきたので、もっと範囲を広げて良い仕事ができたらなぁという思いです。
需要と供給のバランスが上手く取れた状況になるといいですね!
できることならば、きちんと仕事をしながら全国色々なところに行くことが出来て、旅行なのか仕事なのかわからないような楽しい仕事ができると理想的だなぁと思っています!
ワーケーションですね!いいですね!
11.仕事場にない仕事場。
西山さんはコワーキングスペースビィーゴをバーチャルオフィスとして利用されているので、実際にここに来ることは少ないとは思いますが、そんなビィーゴの気に入っているところはありますか?
オフィス街にないところが良い点かなぁと個人的には思っています。
ビィーゴのような場所が駅前の商業施設にあるということはなかなかないと思うのです。
だからこそバーチャルオフィスプランとして利用しているので。
駅チカ、商業施設内という立地に関してはたくさんの人により注目していただきたいです!
12.人との繋がりが生まれる場所。
「ビィーゴは〇〇が出来る場所!」ということで、西山さんにとってビィーゴは何が出来る場所でしょうか?
ありきたりかもしれないですけど、人と繋がれるというのは仕事として何か関係が作れそうな人たちと会うことができる場所なんじゃないかなぁと思います。仕事で関わり合いが出来そうな人たちと付き合う、つながり合うことができる場所ですかね。それが私にとって一番大きいです。
こんな人に出会いたい!であったり、こんな人に出会えてよかった!ということはありますか?
Webデザイナーの方やグラフィックデザイナーの方を紹介してもらいましたが、実際にビィーゴで繋がりが生まれているのでとても助かっています。今後もまだまだあるかなぁと思います。
13.まずは体験!
最後に、これからビィーゴの利用を検討している方にメッセージをお願いします!
とりあえず入ってみましょう!悩んでいるよりも一回体験してみましょう!
そうですね!実際に身をもって体験していただくのが一番ですよね!
西山さんは何がきっかけでビィーゴを知られたんですか?
毎週ビオルネに来る用事があって、その時に館内のポスターを見つけたんです。タイミング的に、ちょうど独立してフリーランスとして仕事し始めたタイミングだったんですよ!
いつも直接来ている場所だからこそ利用しようと思いました。
そうだったんですね!
いつでも顔を出しに来てくださいね!
西山さんへのお問い合わせ
フリーランスのプロダクトデザイナーとして企業や会社から依頼を受けてモノのデザインをするだけでなく、サービスや事業そのもの、企業や会社のブランディングなども幅広く行っている。
西山さんのプロフィール
西山徹[kikikaku P&D(キキカク プランニング&デザイン) 代表]
1968年 京都府に生まれる。1992年 愛知県立芸術大学/デザイン学科を卒業。その後、国内の自動車メーカーで自動車内装のデザイン、パナソニック(株)で家電や住宅設備機器のデザインなどを担当。
2018年に独立、現在に至る。
2000年、2003年、2007年、2008年
グッドデザイン賞受賞(パナソニック在籍時)
2019年~ 摂南大学/住環境デザイン学科非常勤講師
編集後記
フリーランスのプロダクトデザイナーとしてご活躍されている西山さんですが、デザインに関することだけでなく、フリーランスに至るまでの細かい経緯など貴重な経験談を聞くことができました。
リスクを顧みず、ゼロから価値を生み出す。
私も西山さんのように多角的に物事を考え、自分に嘘をつかずに有言実行しようと思います。
── 西山さん、素敵なお話をありがとうございました。